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「あめ」と「つち」の間
「あめ」は雨であり、天である。「つち」は土であり、地でもあるという。十勝のアートにふれて、いま私がその源に想い描くのは、そうした「あめ」と「つち」の間にひらかれる風景だ。
昨夏、北海道をおそった台風による大雨は、十勝にも未曾有の被害をもたらした。数ヶ月後、「自分たちは作物をつくっているんではない、土をつくっているんだ」という農家の方のことば。雨風が去ったのち、荒れ果てた大地に、ひとびとはふたたび土をつくりはじめる。自然と向さ合うたくましさと、みえかくれする素朴さや内気さが、この地域そのものの表象であるように感じられた。
それはまた十勝のアートとも深く通じるところがあるように思う。考えてみれば、芸術もまた土をつくる営みなのかもしれない。雨と土、天と地。その間には草木がはぐくまれ、ひとびとが生さ、果てしない空が広がっている。
藤原 乃里子(北悔道立三岸好太郎美術館)
鈴木隆 Suzuki Takashi
1950年生まれ 北海道置戸町出身•中札内村在住1980年ミュンヘン美術アカデミー(絵画)卒業
ドイツで絵画を学んだ後、十勝を拠点に活動する。木彫と非作為的なランドアート的手法の両面を持ち、土俗的でおおらかな木彫の作風は北海道らしさに溢れる。展示は自主的なアートイベントなどギャラリー外での発表が多く、2017年ハルカヤマ藝術要塞2017 ファイナルカット(春香山麓/小樽市)2017年 500m美術館 vol.22「北の脈々-NorthLine2-」(地下歩行空間/札帳市)2013年 防風林アートプロジェクト 2013–14(愛国地区の農地・防風林/帯広市)2010年 北海道立体表現展 '10(北海道立近代美術館/札幌市)などがある。2014年 文化賞受賞(十勝文化団体協議会)
林瑰好 Hayashi Kiyoshi
1947年生まれ 帯広出身•在住 中学卒業後大工に従事、その傍ら欄闇彫刻の職人に師事し木彫りの土産物などの制作も行い生計を立てる。1968年頃よリその技術を用いて独学でトーテンポールやシーサーのようなシャーマニックな木彫像を多数彫り始める。近年、帯広で発表を続けているが、アートフィールドから離れたいわゆるアウトサイダー的作家である。2015年頃より毎年日曜喫茶館(帯広市)で個展を開催している。
吉野隆幸 Yoshino Takayuki
1956年生まれ 金沢工業大学卒業、帯広出身•在住。建築家でもあり、古いりんご箱などを用いた脱構築的なインスタレーションを行う。建築と彫刻の境界上を行き交い環境や歴史性と関わる作品を制作する。主な個展に1998年ツウ・シード ニ人展 弘文堂画廊(帯広)、2012年心象覚ギャラリー門馬 ANNX(札視)など。主なグループ展には、2011年おびひろコンテンポラリーアート 2011一真正閣の100日(真鍋庭園真正閣・帯広)、2012年OKETOコンテンポラリーアート(秋田小学校・置戸町)などがあり自主的なアートトイベントを中心に発表している。2014年帯広市民劇場奨励賞受賞。
白濱雅也 Shirahama Masaya
1961年生まれ 岩手県出身、多摩美術大学卒業、北海道豊頃町在住。90年代より物語的な不条理絵画や立体「悪意のメルヘン」シリーズを発表、故郷の被災と親類の死を機に、鎮魂と再生の意を込めた木彫神像を彫り始め、その後リノベーション彫刻に発展する。2014年北海道に移住、2015年より実験的アートスペース ArtLabo 北舟を運営し、東京と北海道の美術的交流を図る。主な個展に2017年「Luna y Sol」ギャラリー Nayuta、2008年「裏物語」マキイマサルファインアーツなど。グループ展には2017年札幌国際芸術祭、2014年には自身の企画による Post3.11 を東京都美術館で開催、翌年、原爆の図丸木美術館で続編となる「Post3.11~光明の種」を開催。